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追記に、二ついっぺんに載せようとしたら怒られたので仕切り直します。
この心理テストに加えて、谷山嬢の曲の中でも上位に君臨する恐い曲とを組み合わせたら、色々と訳が分からなくなりました/(^0^)\
この心理テストに加えて、谷山嬢の曲の中でも上位に君臨する恐い曲とを組み合わせたら、色々と訳が分からなくなりました/(^0^)\
メアリーアンのお葬式
――…妖精の公正なる詩よ
oti re fer poem liè
これは私のお気に入り――…
”不思議な歌ですね”
見晴らしのいい丘の上、咲き乱れる野原の中でパソコンを開いている主人の膝の上に乗せられた小さな息子が言う。
「そう?」
”はい、そんな柔らかく歌うメローネの声、初めて聞きました”
他から見れば異形と言われるであろう息子は、自分を生み出した青年-メローネ-の優しげな顔に見惚れ、柔らかい歌声に耳を傾けながら、こてり、とその胸の中に寄り掛かる。
日に透けるような白金の色の髪がさらさらと、夏の終わりの夕暮れの風に靡いている。浮かべている微笑みはどこまでも柔らかく、所々をくりぬかれている奇抜な衣装の下にある身体は日に焼けることすら忘れたかのように白い。
父親と母親を見定めて、自分を生み出した美しい創造主。そんな彼に名も無き息子はゆっくりと瞼を下ろしていく。
”メローネ…”
「なあに? 俺の可愛いベイビィ」
”なんだか、…ぼく、……ねむ、いで……”
――…あなたの側で歌って眠る
è il mio preferito
これも私のお気に入り――…
小さな息子の声と、転がっていた胴から離れた頭が消えるのを見ながら、たくさんの母親と息子を消してきた創造主は、ありありと退屈の表情を隠さずに唇の端を持ち上げて哂う。
「つまんねぇな」
「何がつまらねぇって?」
んんーっと伸びをしながらパタリと後ろに倒れ込んだメローネに映るのは、抜けるような空と同じ色をした渦巻き頭の青年。
常に何かにキレている氷のスタンド使いは、こうした自分の呼び出しに律儀に応じてくれる。
ある時はカフェ、ある時は路地裏、またある時はホテルの一室。
そして今日は、晴れ渡った人気のない丘の上にある花畑。
「お葬式だよ。いつもベイビィをデリートする時あまりにも事務的でつまらないからさ」
ちょっと趣向を変えたんだ、と自嘲するメローネを覗き込んでいたギアッチョは、寝転がるその隣に腰を下ろす。
思いきり伸ばした腕をそのまま頭の下に置き、太陽の眩しさに少しの忌々しさを込めて目を細めると、ギアッチョの指が前髪を捲る。
「んな顔して笑うな、バカが」
ぶっきらぼうに言い捨てるギアッチョの声に、メローネは掌の下で、ほんの少しだけ眉尻を下げた。
使い捨てのベイビィフェイスのデリートの度に、ギアッチョは自分のそばにいてくれる。
彼によると、へらりとした俺の顔が、ベイビィを葬るときに非道く疲れているように見えるからだ、そうだ。デリートボタンでひと押しするだけの工程に、何を悲しむ必要があるのかと思う。だけど、自分のことは思いの外よく判らないもので、今まで自分にも他人にも執着しなかったメローネはギアッチョがそう言ってくれるのなら、恐らくはそうなのだろうと思うことにした。
(でもね、ギアッチョ)
氷を操る掌で撫ぜられるのは堪らなく気持ちいい。だけどそれに見合わない優しさは、心地よさよりも痒さが上回る。
(俺はそんなに脆くはない)
見た目とスタンドの能力とは裏腹に、非道く純粋なところがある男。いつかこっぴどく騙される時が来るんじゃないかとらしくない心配すらしてしまう。
「ごめん、ちょっと眠らせて」
「おう」
額に置かれていた掌が、今は何も見るなと言わんばかりに瞼の上に移動する。
その掌の温かさが、自分の中にあるすっかり凍りついた良心を溶かしてくれればいいのにと、メローネは願わずにはいられない。
ある心理テストでこんな話がある。
夫の葬式に来訪した夫の同僚に一目ぼれした未亡人は、自分の息子を殺してしまう。
何故?と問えば大抵の人間は、その同僚と一緒になるために息子が邪魔だと答える。
だけど、メローネはそうは思わない。
息子を殺せば、また同僚に会える。
普段はそっけないギアッチョが、不器用で痒い優しさをくれる。
そのことに気付いたのは、もうずっと前のこと。
なら、この想いを告げるよりも、もっとずっと確実に彼の側にいられるじゃあないかと。
だから、息子が消えるのを悲しむふりをして、今日も明日も明後日もずっと、メローネは形だけの葬式を挙げ続ける。
――彼が好むその公正
oti re fer piu ll i e
あなたがそれを持てば持つほど、私はそれを等しく欲しい――…
微睡みと現の狭間の中、メローネは静かに即興で作ったベイビィのための鎮魂歌を小さな声で口ずさんでいた。
BGM:COTTON COLOR(谷山浩子)
***この話は結構前から温めていたネタで、でも何かパンチが足りないなと思っていたところに、谷山さんの”Cotton color”を聞いて燃料が投下された感じです。
作中のポエムもどきは、オリジナルの歌詞の一番ヤバい部分を英語からイタリア語に翻訳して(協力:ググる先生)、無い知恵を絞った一種のアナグラムとでも思っていただければ幸いです。
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